国際資産税専門税理士の考えごと

資産税(相続税・贈与税・譲渡所得など)の解説

大物税理士とのバトルと職人気質・・・回想録(箸休めに)

「私は国税出身の税理士です。」・・・そんなことはプロフィールをご覧になれば分かると思います。

今思うと、昔の国税調査官クセの強い人ばかりだったような気がします(私も含めて?)。これはいい意味で捉えていただきたいのですが、いわゆる職人気質で曲がったことが大嫌い。これは担当事案の処理にも表れます。

実は、かつて私が担当した事案で、課税の決定処分をして(業界では「決定(更正)を撃つ」という言い方をします)訴訟にまで発展したものがあります。

この事案を担当したのは弱冠27歳の頃でした。実務を一巡して、自身で仕事を組み立てるレベルで、組織的に中堅クラスの位置づけになろうかと思います。怖いもの知らずで、いろんな意味で勘違いをする時期でしょうか(笑)。でも、少なからず主体性を持って事案の処理に当たっていました。

その時の関与税理士が「国税出身の税理士」で、国税局の課長クラス(税務署でいえば署長クラス)まで上り詰めて、私の入局初年度で受けた調査事績の表彰でお目にかかった人でもあり、いわゆる大物と呼ばれる税理士です。当時の私の直属の上司も、その人に仕えていたことがあります。

事案の内容としては、訴訟でも課税処分が維持されたとおりですが、スジ的に是正を要するものでした。しかし、少しでも落としどころを探ろうと、様々な角度から税理士のアプローチがあり、人事的な圧力(退官後も影響力があったようです)や私のプライベートや趣味の話など、手段を選ばない内容も含まれており、私は若いこともあって相当悩みました。

そこで、私の背中を押したのが当時の署長です。署長は、立場上、個別の調査事案の経過に関わってくることはなく、最終処理の段階で説明を聞いて決裁することが通常です。でも、この事案に関しては、逐一状況を説明するように命じ、懐柔された私の上司を署長室出入り禁止にし、直談判に赴いたその大物税理士にも、一切面会しませんでした。これは異例すぎる対応といえます。

一方、私には「いいからしっかりやれ!」と言うのみでした。これで、心が折れそうになった自分を取り戻すことができました。

調査が進捗し、署長の最終決裁の段階では、「うむ、よく分かった。」と一言、決裁のハンコを押しました。その時のことは今でも鮮明に覚えていますが、私が発した「私は正しかったのでしょうか。」に対して、「やらなアカンときはやる。それだけだ。」と。ただでさえ顔面凶器のような(ごめんなさい)風貌に加えて、「ぶわっ!」という風圧を感じました。

それ以来、私は自分を見失うことは一切ありません。クセのある職人の最終形態に向けて、さらに一段階上がった(上がってしまった)のかもしれませんが(笑)。

仕事に関して、テクニックも重要ですが、それを動かすのは「人」。私の業務では税法や計算が中心ですが、事案を形成するのはやはり「人」。原点は「気概」や「気質」ですよね。

でも・・・現職辞めるまで面倒見てきた後輩たちは、今ごろちゃんとやってんのかなぁ。少々気になるところではありますが、対峙する立場からすると、あんまり強く成長されすぎても困りますな。