国際資産税専門税理士の考えごと

資産税(相続税・贈与税・譲渡所得など)の解説

ホンっトに失礼な税理士法人の話

「税務業界の役に立とう!」と思って国税当局を辞めて飛び出しましたが・・・

 

まぁ、ご縁があって入所した税理士法人がありました。

私のミッションは、「専門知識とノウハウを教えること」でした。

その税理士法人は全国に展開しており、とにかく毎日多くの質問などがあって、特に税務調査の立会いでは東京や横浜にも度々出張しました。

それ以外に、私の専門分野「国際資産税」についても惜しむことなく伝播し、所内に「国際部」が立ち上がりました。

あるとき、代表からコラム執筆の依頼があったので、「ぜひ、みなさんに有益な情報を提供しよう」と考え、一般の税理士が書けないような視点で書き上げました。この内容については、国税当局の職員から「調査の参考になる」と言われるものでした。

しかしながら、大変残念な事態が起こります。私の全力をもって書き上げたコラムが、税理士法人の広告媒体として使用され、さらには、私の存在自体を集客に使う旨伝達がありました。

加えて、支店の代表が「安永のような自由人がいると大変だ」という趣旨のことを、他のスタッフに陰口を言っていたのです。まぁ、そういった情報が耳に入って来ること自体、支店の代表に危機管理意識がない証左ですが。

これだけではありません。私は、2020年10月に拙著「調査の現場から見た国際資産課税の実務」を出版しておりますが、その原稿を代表が見て、「税理士法人名で出版できないか」と言ってきたのです。この原稿は、私が国税当局に在籍していたときから書き溜めたもので、実務の知識とノウハウの集大成といえるものです。これはさすがに衝撃でした。実際に、この原稿から税理士法人のホームページに転載されたと思しきコンテンツが見受けられます。

普段、ほとんど怒らない私ですが、このときばかりはダメでした。しばらくして、私は、理由を告げずに職場を去ることだけ伝えました

一連の出来事の中で、私が分かったことは、「知識やノウハウに対するリスペクト」が無く、金儲けのみを追及する者がいる。かつ「仕事に対する哲学」がない者がいる。ということ。ホームページでは美辞麗句が並ぶも、中身が伴っていないという現実。

人生で一番の裏切りに遭いました。おそらく、今後も許さないと思います。

それがきっかけで、私は「我が道を、自分が信じる道を行く」ことを決意しました。

「いつまでも職人でありたい。少しでも役に立ちたい。」という思いで独立しました。

おかげさまで、こんな私を頼っていただけるお客様や税理士の先生方がおられます。これからの職業人としての人生は、こういった方々に捧げようと思います。

こっち側から見た税務業界

やすなが国際資産税事務所、開設してから1.5年経ちました。

まず思ったのは、税理士の先生方がキチンとお仕事をされていること、「えっ」というほど細かいところまで。

まぁ、それが当然といえば当然ですが・・・

冷静に考えると、国税当局が調査に着手したり、納税者サイドに接触したりするのは、少なからず問題がある事案です。これまで私が関わってきたのは、いわゆる「通常の申告ではない事案」。もし問題なければ「省略」、つまり調査はなく、顔を合わせることもありません。

話を戻しましょう。

私がさらに感じたことは、勉強熱心な先生方が多いということです。

ありがたいことに、税理士の先生方からお声を掛けていただく機会に恵まれていますが、みなさん、私が話すことに興味津々の姿勢でお聞きになります。国税当局では感じられない熱量です。むしろ、「スジが悪いのは国税OB税理士が多いのではないか?」と思えてきます(先のブログ参照)。

そこで思いました。私が23年間培ってきた実務と研究の成果は、ここで活かされるべきだと。

今後は、自分自身の業務を拡大するのではなく、税理士のみなさまに少しでもお役に立てるよう、私の持つ知識やノウハウをもってサポートしていきます

あと何年間、キレを保てるか分かりませんが、頼っていただけるところには、私の全てを惜しみなくお伝えしていきます

大物税理士とのバトルと職人気質・・・回想録(箸休めに)

「私は国税出身の税理士です。」・・・そんなことはプロフィールをご覧になれば分かると思います。

今思うと、昔の国税調査官クセの強い人ばかりだったような気がします(私も含めて?)。これはいい意味で捉えていただきたいのですが、いわゆる職人気質で曲がったことが大嫌い。これは担当事案の処理にも表れます。

実は、かつて私が担当した事案で、課税の決定処分をして(業界では「決定(更正)を撃つ」という言い方をします)訴訟にまで発展したものがあります。

この事案を担当したのは弱冠27歳の頃でした。実務を一巡して、自身で仕事を組み立てるレベルで、組織的に中堅クラスの位置づけになろうかと思います。怖いもの知らずで、いろんな意味で勘違いをする時期でしょうか(笑)。でも、少なからず主体性を持って事案の処理に当たっていました。

その時の関与税理士が「国税出身の税理士」で、国税局の課長クラス(税務署でいえば署長クラス)まで上り詰めて、私の入局初年度で受けた調査事績の表彰でお目にかかった人でもあり、いわゆる大物と呼ばれる税理士です。当時の私の直属の上司も、その人に仕えていたことがあります。

事案の内容としては、訴訟でも課税処分が維持されたとおりですが、スジ的に是正を要するものでした。しかし、少しでも落としどころを探ろうと、様々な角度から税理士のアプローチがあり、人事的な圧力(退官後も影響力があったようです)や私のプライベートや趣味の話など、手段を選ばない内容も含まれており、私は若いこともあって相当悩みました。

そこで、私の背中を押したのが当時の署長です。署長は、立場上、個別の調査事案の経過に関わってくることはなく、最終処理の段階で説明を聞いて決裁することが通常です。でも、この事案に関しては、逐一状況を説明するように命じ、懐柔された私の上司を署長室出入り禁止にし、直談判に赴いたその大物税理士にも、一切面会しませんでした。これは異例すぎる対応といえます。

一方、私には「いいからしっかりやれ!」と言うのみでした。これで、心が折れそうになった自分を取り戻すことができました。

調査が進捗し、署長の最終決裁の段階では、「うむ、よく分かった。」と一言、決裁のハンコを押しました。その時のことは今でも鮮明に覚えていますが、私が発した「私は正しかったのでしょうか。」に対して、「やらなアカンときはやる。それだけだ。」と。ただでさえ顔面凶器のような(ごめんなさい)風貌に加えて、「ぶわっ!」という風圧を感じました。

それ以来、私は自分を見失うことは一切ありません。クセのある職人の最終形態に向けて、さらに一段階上がった(上がってしまった)のかもしれませんが(笑)。

仕事に関して、テクニックも重要ですが、それを動かすのは「人」。私の業務では税法や計算が中心ですが、事案を形成するのはやはり「人」。原点は「気概」や「気質」ですよね。

でも・・・現職辞めるまで面倒見てきた後輩たちは、今ごろちゃんとやってんのかなぁ。少々気になるところではありますが、対峙する立場からすると、あんまり強く成長されすぎても困りますな。

外国の弁護士(会計士)さんのお話

国際相続などの税務に従事していますと、外国の弁護士・会計士さんとやり取りする場面が多くあります。

でも、そのみなさんが、現地国(自国)の税務を完璧に理解しているかというと、必ずしもそうではないようです。

例えば、海外の不動産の所有権を移転する(名義を変更する)際、現地国で課税が発生することに気づかない場合があって、当事者の間で話がまとまっていたのに、手続きの最中で「実はこっちの国で、〇〇税がかかってしまうんだ」としれっと言われることがあります。こちらは、日本の課税に関するリスクなど、きちんと精査の上でクリアーしてたのに・・・どうするよ?って感じです。

それを聞いて、私も現地国の法令をリサーチしてみましたところ、現地国内の居住者同士の取引では課税上の問題はないけれど、非居住者が関わる場合は課税される取扱いになっていました。

その弁護士(会計士の資格もあり)さんは、他の会計士さんに聞いて判明したとのことで、そのことを知らなかったようです。

放っておいても、私のお客様には実害はないのですが、やはり先方がお知り合いということもあって、見過ごすわけにはいかないということで、追加で発生した現地国の課税をきちんと解決する方向で、手続きを進めることになりました。

「コラっ!〇〇(⇐現地の弁護士さんの名前)!」と、お客様と笑ってお話をしましたが、考えてみると、日本でも、非居住者の課税関係をすべての税理士さんが理解しているわけではありませんので、「外国でも、そういうものなのかな」と思ってしまいました。

ただ、私自身も反省する部分があります。「課税リスクを読むボーダーラインを広げる」という点です。日本の課税リスクを読むことは職責として当然ですが、外国ではどんな課税が生じるのか併せて読み切らないと、お客様に不意打ちとなることに変わりはありません。今回のケースでは、私から「非居住者が取引に関わるが、そちらの国の課税関係は大丈夫?」と先回りして現地の弁護士さんに問いかけをするのが模範解答だったのかな、と思います。そういった積み重ねが、専門性のレベルを上げることに繋がるのではないでしょうか。

ともかく勉強になりました。ある意味、〇〇(⇐現地の弁護士さん)に感謝です。

確定申告期限が延びましたが・・・当局は大丈夫?

災害などの局所的なケース以外で、私の記憶では、このような事態は聞いたことありません。

期限が延長して、ホッとしている方が多いのではないでしょうか(特に税理士さん)。

でも、課税当局の事情を考えると、「ホントに大丈夫なのかな・・・」と考えてしまいます。

まずは、会場の問題です。広域特設確定申告会場がおそらく3月16日で閉鎖され、その後は各税務署で対応することになると思われます。各税務署で、今更、レイアウト変更して会場を設けるのは大変でしょうね。スペースの確保、PCの配線、備品の移動など、毎年数か月掛けて計画しているところを半月でやらなければなりません。総務課、各系統の総括担当は徹夜仕事になるのでは・・・。会場の変更をしないのが最善の方法だと思いますが。

そして、人員の配置ですね。忙しいエリアを管轄する税務署には他署から応援の職員が派遣されるのですが、そのためには法令上、辞令の交付が必要なんです。その辞令の有効期限がおそらく3月16日となっていると思うので、それ以降、応援職員が一斉に引き上げることになり、忙しさと人員のバランスが取れていない税務署はパンクするかもしれません。

それから、アルバイトさんの不足です。予算の都合上、確定申告のアルバイトさんは3月16日までとされていることがほとんどです。原則、延長はありません。申告会場のPCコーナーのスタッフの大半は、アルバイトさんが配置されていますので、一斉にいなくなると、深刻な人員不足となってしまいます。

あと、何よりも広報の問題です。申告期限が延長されたことと、申告会場がどこなのか広報しなければなりません。納税者の皆さんが混乱しないような方策を立てなければなりません。

国税当局のように大規模な組織となると、大型客船の舵を切るように、運営の転換を図るにも動きが鈍くなります。確定申告の運営が、大混乱とならないようにしてもらいたいものです。

まぁ、確定申告の事務に押されて、今シーズンの税務調査の件数が減るかもしれないので、それはいい知らせなのかな?とは思いますが。

お客様にとって、最も得になるアドバイス(自力での確定申告)

さぁ、確定申告が始まりました!

確定申告会場に足を運び、ご自身で申告される方は、前半の空いているうちになさってください。

私が現職に在籍していたときを思い返すと、空いているときに来られる納税者の方々には、やはり時間的にも余裕がありますので手厚くアドバイスできましたね。特に、持分が複雑な不動産譲渡、事業用資産の買換えなどの特例が絡む申告では、1時間以上付きっきりで対応できました。

でも、これがラスト1週間といった繁忙期に来られると、十分な対応ができなくなります。もっとも、個別性の高い資産税の申告を、あの空間で済ませようというのが厳しいですね。

税理士となって思うことは、あの申告会場の空間での業務を机上でしっかり検討できるというのは、とてつもない安心感があるということです。こと不動産譲渡といった申告は金額が大きく、細かい特例を検討するときが多々ありますが、落ち着いて、税法の条文を確認しながら(ときにアールグレイを飲んで:すみません・・・)、満点答案の申告書を作ることができます。

だからといって、すべての申告を税理士に依頼すればいいかというと、そうではないと思います。

私のお客様で、税務調査の立会いをきっかけに、所得税申告のご依頼をいただいた方がおられますが、その内容が決して難しいものではないことが分かりました。

そこで私はいろいろ考えましたが、お客様に国税庁HPを使った確定申告書の作成方法を、多少時間をかけてもお伝えするという選択をしました。一度覚えたら、ご自宅でゆっくりできますし、所得税の計算の流れが分かること、何よりも、今後毎年支払う税理士報酬が必要なくなるというメリットがあります。偶発的な難しい内容があったり、毎年の申告と状況が異なるときのみ、私に聞いていただければ解決できます。

そのお客様は、大変興味を持っていただいて、ちょっとしたパソコン教室状態となりました。「来年するときに忘れてしまうかも・・・」とおっしゃっていましたが、「そのときはいつでも聞いてくださいね。」とお伝えしたら、安心してチャレンジできるとのことでした。

私はかつて、短期間ではありましたが、「売上至上主義」の環境に身を置いて痛感しました。「士業たる者は、総合的に思慮を重ね、その良心に従い、お客様に最良のアドバイスをする」のが、その矜持ではないでしょうか。

 

 

確定申告会場のことで小耳にはさんだこと

先日、「贈与税の申告は2月3日から」と書きましたが、「どこで申告したらいいの?」という方がおられました。

「税務署では?」と聞き返したのですが、「税務署で、確定申告会場は2月17日からです。それ以降に会場に行ってください。」と追い返されたとのことです。

うーん、法令で定められている義務を履行するのに、本来、行政はそれに沿う運営をすべきでしょうが、その対応はいかがなものかな・・・と思います。もちろん自己申告ですが、せめてその場所ぐらいは提供してもいいんじゃないかなぁ。だって、税法に従ったことをするんですよ。これって、納税者側のわがままですかね?

それなら当局としては、「だったら、自宅でe-taxでしてください。」となるのでしょうか。

いやいや、ちょっと待って。それは会場の開設日と別の話でしょ。職員の人員配置の問題?それも違うでしょ。やっぱり最低限、法令に沿った運営をしなきゃ。

また、確定申告会場では長時間立ちっぱなしで、さらに資産税が絡む申告では、面倒な計算や特例の検討をしなくてはなりません。特にお年寄りの方々ですが、体調を崩されることがあるようです。あと、妊婦の方も本当に大変だと思います。しんどくなったら、職員にすぐ助けを求めてください。毎年どこかの申告会場で、救急搬送される方がおられるようです。決して無理をされませんように。