国際資産税専門税理士の考えごと

資産税(相続税・贈与税・譲渡所得など)の解説

一時休戦・・・税務調査について思うこと

税務調査の立会いのご依頼を受け、現在も進行中ですが、税務署が確定申告の時期に入ったため、一時休戦となりました。

しばらくゴタゴタはないといっても、お客様の心労は依然として続きます。

「こちらとしては、これからの戦略を練りましょう。」と少しでも不安を和らげるように努めています。その打ち合わせの中で、対応策のヒントや取っ掛かりが見つかったりするので、この休戦期間をただ何もせずに過ごすのではなく、有効に使いたいものです。

さて、私が税務調査対応のときにいつも考えていること。それは次のとおりです。

1.調査官の持っているカード(客観的な証拠資料)をできるだけ把握すること

2.調査官の見立て(課税する論拠)を推測すること

おそらく、これらの点は不可分一体かと思いますが、確度のある想定ができないと、こちらも戦略を練ることができません(でも「真実発見」が第一です)。

相続税は、事業などの経済活動と違って、被相続人や相続人のすべての行為等に証拠資料が伴っているわけではありません。そのため、税務調査における事実認定では、相続人等の記憶によることが多いのです。つまり、そういった記憶に基づく「供述」が矛盾のないものかどうか、あらゆる質問をぶつけて一定の事実を浮かび上がらせていきます。この点に調査官の力量が問われ、いわゆるヘタクソな調査では、単発の問答で終了して、二の矢、三の矢の質問が来ることはありません。

私は、お客様と事前の打ち合わせで質問応答のロールプレイをしますが、甘く見ておられた方に、その厳しさによく驚かれます。

世間では、税務調査で「何を聞かれる」のか知れ渡っていますが、その先の「何のために聞かれる」といったことまで想定していないように思えます(想定できないのかな?)。

また、税務調査は「人」対「人」のやり取りです。攻める方も守る方も、すべての「知識」と「人格」がぶつかり合います。「この場合はこうすればいい」という定石はなく、関与した税理士の能力に結果が左右されることになるのです。

贈与税の申告は2月3日からです。

確定申告シーズンですね。

贈与税の申告は2月3日スタートです。

さて、資産税の課税部内では、「所得・贈与税申告フルコース」という言葉があります。

納税者の方で、①マイホームを買い換えている場合で、②新規購入したマイホームの資金の一部を贈与されており、③さらに新規で住宅ローンを組まれているときです。

そうすると、

1.住宅取得資金贈与の非課税の特例に係る贈与税の申告

2.さらに上記1の非課税枠を超えた贈与金額があると、「相続時精算課税制度」を適用する申告

3.売却したマイホームの譲渡所得(所得税)で赤字(譲渡損)が出ているときは、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を適用するための申告

4.上記3の場合は、さらに「住宅ローン控除」の申告

5.売却したマイホームの譲渡所得金額が黒字の場合は、居住用財産の譲渡に係る3000万円の特別控除を適用する申告

が必要となり、添付書類を含めるとかなりのボリュームになってしまいます。おそらく、確定申告会場に、各特例等の添付書類を封入する封筒が備え付けてあると思いますが、すべての特例が絡むと4つの封筒を抱えて手続きすることになります。

そして、これを戦場のような確定申告会場で一気に済ませるとなると長時間を要し、書類を散逸することもありますので注意しなければなりません。

また、住宅ローン控除と居住用財産の譲渡に係る3000万円の特別控除は併用できず、どちらが得なのか考える必要がありますし、住宅取得資金に係る贈与税の特例を受けている場合は、その金額を住宅ローン控除の対象金額から除外して、計算しなければなりません。

せっかく大変な思いで確定申告をしたのに、後になって、誤りなどを訂正することになると面倒ですので、気をつけていただきたいと思います。

はじめまして。税理士の安永淳晴です。

こんにちは。税理士の安永 淳晴(やすなが きよはる)と申します。
「資産税専門税理士」、「国際資産税専門税理士」です。

「税金・税務」の中でも、「資産税」と呼ばれるのは、「相続税」、「贈与税」、所得税に区分される「譲渡所得」に関する税金です。
なぜ、私が「資産税専門」かと申しますと、かつて国税調査官として資産税のセクションに20年以上在籍し、資産税の実務と研究を積み重ねてきたという経緯があります。
私の経歴を簡単にご紹介しましょう。


1995年4月 国税局に国税専門官として採用

1995年7月 資産課税部門配属(資産税に関する調査)

1999年7月 特別国税調査官付調査官(財産評価・路線価などの評定)

2003年7月 国税国税訟務官室(資産税に関する税務訴訟)

2007年7月 広域機動調査官・審理担当

2010年7月 国際税務専門官(海外資産関連事案の調査)

2019年1月 退官

2019年4月 税理士登録

2020年1月 やすなが国際資産税事務所開設


こうして見ますと、税務調査は当然として、私が、「資産税」の分野についてはひととおりの仕事をしてきたこと、その上で、特に「審理系」と「国際系」を中心とした実務に携ってきたことが分かると思います。

ところで、国税の業界では、「資産税」や「法人税」といった扱う税目のほかに、「〇〇系」という区分があります。
例えば、先ほどの「審理系」は、訴訟や不服申立ての対応など、税法とその他の法律を自在に操るスキルが要求され、「国際系」は、資産税の分野なら、海外資産の相続、渉外相続事案、海外資産の譲渡などを専門に扱うセクションです。
他にも、資料調査課や機動課といった調査専担の「調査系」、総務人事などの「官房系」があります。
私は「審理系」と「国際系」を渡り歩いてきましたが、この二つを実務で取り扱ってきた調査官、つまり、この二つの分野を得意としている調査官は、国税の業界でほとんどいません。
私が思うところ、「国際系」の分野は、税務調査の能力はもちろんのこと、「審理系」のスキルが要求され、さらに国際法の知識、租税条約や外国法令等をリサーチする力が必須となります。
偶然、私の学生時代の専攻が国際法でしたので、そのときに学習したことが実務で幾分役に立っています。

これからは、私が専門としている「資産税」を中心に、いろいろと考えたり、気付いたりしたことなどを綴っていきたいと思います。